STARS展の感想・レビュー現代アート好きにはつまらない?
森美術館で開催中の『STARS展』に行ってきました!
日本の現代アートにおける超大物アーティスト6名の展覧会となっております。
参加アーティストは村上隆・李禹煥(リ・ウファン)・草間彌生・宮島達男・奈良美智・杉本博司というラインナップ!めちゃめちゃ豪華!
今回はその全体の感想やアーティストごとのレビューを書いていきます。
展覧会は各アーティストのブースが分かれていて順番にまわる形式になっています。では、各アーティストのブースや印象に残った作品を紹介していきます。
※以下に掲載する写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止4.0国際」ライセンスの下で許諾されています。
村上隆
村上隆《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》
まずはこの等身大美少女フィギアがお出迎えです。インパクト抜群!!
村上隆は「スーパーフラット」の理論を提唱し、日本絵画的な表現とサブカルチャーをミックスさせた作品やオタク文化をアートに昇華させようとした人物です。
印象に残ったのは《原発を見に行くよ》というビデオ作品です。
内容は原発反対のデモに参加した若いカップルが(デート感覚で?)事故のあった原発を見に行くというもの。ネコのかぶりものをかぶったカップルが町を散策する様子がほのぼのと描かれます。
一見爽やかソングのPVみたいなんですが、立ち入り禁止区域に散歩感覚で入っていく描写や帰ってスニーカーの放射能を測ったら計測器から警告音がした、というシーンにゾッとしました。(私だけでしょうか?)考えさせられる作品です。
村上隆《ヒロポン》
水着を着たアニメ風の女の子が母乳で縄跳びをしている作品。
なんというか、萌えアニメに熱狂するオタクをキモいと感じる感覚って少しあると思うんです。それをよりナンセンスに強調した感じがしました。
またはアニメだからこそ性的な表現の規制がゆるいという風刺のようで、風刺しながらも文化として尊重しているような。
だって目や髪形はアニメ風にデフォルメされているのに、性的な部分は生々しいほどリアルなんですよ。この気持ち悪さをぜひ味わってほしいです。
李禹煥(リ・ウファン)
「もの派」の中心となった人物。作りこむのではなく、石や鉄などの物質そのものやその配置・関係性を提示する手法が特徴です。
瀬戸内・直島に安藤忠雄とコラボレーションした美術館があり、来訪した際に感動したのを覚えています。”もの”の配置された空間そのものがアートになるような素晴らしい美術館でした。手を加えていない物質の質感が生み出す「静」の空気がとても好きです!
李禹煥《関係項》
李禹煥《関係項-不協和音》
タイトルの通り、石とガラス、石と鉄が関係しあうことで紡ぎ出されるもの。また、意図して”作り上げた”のではなく物質によって”作り出された”もの。これらの作品にはそんな魅力があると思います。ぜひこの空気感を味わっていただきたいです!
草間彌生
水玉模様に覆われた《南瓜》などご存じの方も多いでしょうアーティスト。水玉や突起など同じモチーフが繰り返される表現が特徴です。これらは幼少期に経験した幻覚からきているといいます。
草間彌生《ピンクボート》
触手のような柔らかい突起に覆われたボート。心のざわざわした部分が具現化したような(ある種気色悪い)形状にビビッドな色使いというギャップ。
トラウマ的な嫌悪感をポップに色付けすることでポジティブへと昇華したのでしょうか。不思議な作品です。
宮島達男
LEDのデジタルカウンターを使ったインスタレーションや立体作品の製作を中心に活動するアーティスト。
わたしは直島の”家プロジェクト”で宮島さんの作品と出会いました。異なるリズムで光るLEDの数字が、海に写った星空のように浮かんでいてとても素敵でした!今回の展示はその発展形ともいえる作品です。
宮島達男《「時の海-東北」プロジェクト(2020東京)》
この作品は東日本大震災への想いが込められており、3000個のデジタルカウンターを東北に設置することを目指すプロジェクトです。今回は現在までに集まった719個のデジタルカウンターを展示しています。制作中の作品に触れられる機会なんてめったにない!
1~9、そして0(ゼロ・暗転)を繰り返し明滅するLEDは、寿命の違う生き物が死んではまた生まれるように生命の呼吸や永遠性を感じさせます。
宮島達男《30万年の時計》
30万年の時を刻むことができるという時計。刻々と変わる数字に出会えた一瞬が特別な時間のように思えます。
奈良美智
やわらかいタッチで描かれたこどもや動物のイラストは見たことがある方も多いのではないでしょうか。ドローイング、絵画、彫刻などさまざまな作品を制作するアーティストです。こども=純粋でか弱く可愛らしいもの、というイメージを覆すような、どこか不機嫌でずる賢い表情が特徴。近年では穏やかな雰囲気の作品も多いとか。
奈良美智《Voyage of the Moon(Resting Moon) / Voyage of the Moon》
同作品。窓辺の置物。細かいところまでかわいらしく装飾されています。
やわらかい色使いや造形が幼いころの純粋できらきらした気持ちを彷彿とさせます。
中はアトリエのようになっていて、反対側の扉から覗くことができます!
奈良美智さんは一番展示作品が多かったんじゃないかな。独特の世界観を堪能できます。
杉本博司
ラストはこの方。
写真や現代美術に限らず、古美術、建築、造園、伝統芸能など様々な分野に通ずるアーティスト。江之浦測候所の設立者でもあります。
調べると、直島の家プロジェクトで《護王神社》を制作した方でした。写真家の印象が強かったので驚きです。こちらも現代的なのに古代の神秘を感じさせる不思議な作品でした。本当に幅広くご活躍の作家さんです!
杉本博司《シロクマ》
こちらは「ジオラマ」シリーズの最初の作品だそうです。シロクマの息遣いが聞こえてきそうです。とてもジオラマを撮影したものとは思えません。
このほかに展示されている「海景」シリーズも圧巻でした!水平線と月のシンプルな構図ゆえに際立つ美しさがありました。
映画作品《時間の庭のひとりごと》も鑑賞することができます。
STARS展の個人的感想
まさに現代アートのスターたちが集まる展覧会!大型展示も多く圧巻だった!が、
正直にいうと、少し物足りなかったです。
なぜかというと、基本的な展覧会に比べ作品数が圧倒的に少ないのです。
いつもなら森美術館見終わるのに3時間くらいかかるのですが、今回は1時間半くらいで見終わってしまいました。
もちろんこれには理由があって、大型作品や部屋ごと使ったインスタレーションがメインのため、スペース的にも予算的にも限界だったのでしょうが…。
私は李禹煥(リ・ウファン)さんと宮島達男さんが好きで見に行ったのですが、展示されてるのが各3,4作品だったので「(非常に失礼ながら)え…もう終わり?!」と思ってしまいました。もちろん各展示作品は非常に素晴らしかったのですが、もっと色々見たかった気持ちが強く残念さが残ってしまいました。杉山博司さんも少なめだったな…。
好きな作家さんがいてその作品をたくさん見たい!という方には物足りなく感じるかもしれません。
※公式HPで作品リストが公開されておりますので、事前にチェックするといいかもしれません。
アート初心者にオススメ!
ただ、ここまで大きい作品や各アーティストの代表作ともいえる作品が並ぶのはかなり貴重な機会だと思います。にわかの私でも、よくこんなに集められたな!と思うほどです。美術館が力を入れている証拠に会期も長く設定されています。
日本の現代アートにどんなものがあるか知りたい!という方や、各アーティストがどんな作品を作っているのか・作風を知りたい!という方にはとても良いと思います。
森美術館『STARS展:現代美術のスターたち-日本から世界へ』は2021年1月3日まで開催しております。ぜひ足を運んでみてください!