瀬戸内アート旅:家プロジェクト(角屋・南寺・護王神社・石橋・碁会所・はいしゃ)

2016年、直島の家プロジェクトに行きました。
共通チケットでまわれる6か所は全制覇。(内藤礼さんの《きんざ》は完全予約制のため都合が合いませんでした。)
厳粛なアートから秘密基地のような場所までさまざまでとても楽しかったです。

共通チケットはパンフレット状になっていて、行くとスタンプを押してくれます。まだ大事にとっておりますよ!

今回はその「角屋」「南寺」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」について書いていきます。

 

 

家プロジェクトとは?

香川県直島の本村地区の空き家を使ってアーティストが作品を作った施設。作品は町に点在し、家の中に作品があるものもあれば家の空間自体がアートとなっている場所もあります。現在は「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開されています。

 

角屋

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宮島達男《Sea of Time'98》 photo:鈴木研一
アーカイブ・シリーズ 第8回宮島達男「角屋」"Sea of Time '98 " | ブログ | ベネッセアートサイト直島 (benesse-artsite.jp)

直島家プロジェクトの中でも「角屋」は私にかなりインパクトを与えました。
この作品を見て宮島達男さんが好きになったんだよな。

それより前に東京都現代美術館の《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》を見ているんですが、そのときは作者まで認識しておらず…。

 

《Sea of Time '98》は「角屋」の部屋の一室にプールのように水が張られていて、その中に散りばめられたLEDカウンターが数字をカウントしているという作品。カウントのスピードは個々に異なり、1~9までをカウントし0で暗転を繰り返す。これが生と死を表しています。

 

白壁の和風建築(土蔵造り?)の中に現代的なLED作品というギャップも印象的でしたし、古くからある建物の中でまばゆい光を放つ数字たちは遥か昔から静かな呼吸を続けているようでした。

 

 現代アートって歴史や社会情勢への問いかけだったり、アートに対するアート!(アートの過去の概念をぶち壊す!)みたいな作品が多い印象だったけど、この作品は前衛的でありつつもテーマが根本的でシンプルなところが好きです。

 

 

南寺

南寺
家プロジェクト | アート | ベネッセアートサイト直島 (benesse-artsite.jp)

深い色の木でできた木造の平屋。この中でジェームズ・タレルの作品「Backside of Moon」が体験できます。設計は安藤忠雄

建物に入ると中は真っ暗。目を閉じているか開けているか分からないほどの暗闇です。くねくねとした狭い通路を手摺の感覚のみを頼りに進んでいくと、広い空間に出ます。(といっても何も見えませんが。)そこでベンチに座り前方を見つめるように言われます。

暗闇を見つめること15分ほど。すると何も見えなかった前方にぼうっと光る大きな窓が見えてきます。
窓の奥は壁になっており、間を見下ろすとドライアイスのようにぼやっと煙っています。

見えなかったはずのものが見えてくる。そんなことがあるのかという驚きと、こんな体験ここでしかできない!という感動がありました。

「今見えているものがすべての姿じゃないのかも」そんな風に思わせられます。
感覚を研ぎ澄ます大切さを教えてくれるような作品です。

※ただし暗いの苦手な方は注意です。友達は「発狂しそうだった」と言っておりました。

 

 

護王神社

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Appropriate Proportion-J — Hiroshi Sugimoto (sugimotohiroshi.com)

元々この地にあった神社の改築に合わせて作られたアート作品。設計は杉本博司

特徴的なのが本堂に続くガラスの階段。水を空中で固めたような、溶けかけた氷のようなかたちをしています。この階段は地下の石室までつながっています。
石室へは右手の洞窟のようなところから入ることができます。
石室の内部はぽっかりとあいた空間になっており、本堂へ延びる階段の上部からガラスを通してキラキラとした光が入ってきます。

石室内部。光学ガラスの階段を通じて光が差し込む。

Appropriate Proportion-J — Hiroshi Sugimoto (sugimotohiroshi.com)

一見どこにでもあるこじんまりした神社なのですが、この階段の異質さがすごくアートっぽいと思いました。石室の中は古代遺跡(ピラミッドとか古墳)に入ったような感覚を味わえます。

本堂と地下を結ぶ階段ですが、通り道が正面の巨大な一枚岩でふさがれているため人が通ることはできません。ここを通れるのは肉体を持たない神様や霊体なのかしら?
作品名は「Appropriate Proportion」。直訳すると「適切なかたち」。この作品が杉本博司が考える「神様の祀られる場所としての適切なかたち」を表しているのでしょうか。

 

 

石橋

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家プロジェクト | アート | ベネッセアートサイト直島 (benesse-artsite.jp)

2001年まで個人宅であった石橋家の家屋を再建。千住博の「ザ・フォールズ」「空(くう)の庭」があります。
昔ながらの雰囲気を残すこの家は寺院のような神聖さとそこで過ごした人々の温かさが感じられます。この土地での暮らしを感じられる、町に馴染んだ作品です。


碁会所

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直島 | 瀬戸内国際芸術祭2019 (setouchi-artfest.jp)

2つの小さな和室を屋根でつないだような不思議な建物。畳に配置された椿は須田悦弘の作品。
私が見たとき、この椿は生花で毎日新しいものに変えているんだと思っていました。でもこれ、彫刻作品なんですよね。精巧すぎて全く分かりませんでした、、、!
作品の椿の美しさもさることながら、この空間自体が作品になっているその空気を感じていただきたいです。

 

 

はいしゃ

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歯科医院だった場所を一軒まるごと作品化した建物。大竹伸朗「舌上夢/ボッコン覗」。
ネオン看板があったり自由の女神があったり、絵画も彫刻も昭和レトロもアメリカンも色んなものを詰め込んだ感じです。
中はごちゃごちゃとしていて至る所がアートになっています。まるでガラクタを集めた秘密基地みたいな。「ここにこんなのがある!」と内部を探索する楽しさがありました。アート好きじゃない方でも直感的に楽しめる場所だと思います!

 

 

当時印象に残ったのは「角屋」「南寺」でしたが、作品の背景やアーティストについて知ると全部もう一回まわりたい!と思ってしまいますね。4年経った今でもとても印象に残っていて、本当にいい旅だったなと思います。
次こそは「きんざ」に行きたいです。あと、犬島の家プロジェクトにも行きたい!