MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ 感想・レビュー

 

 東京都現代美術館の「MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ」を見に行ってきました。

この展覧会は美術館が改修工事の間に収蔵された作品を中心に構成されています。
見ごたえバツグンでとても面白かったので、本当に行けてよかったと思いました!

私は戦後というより現代に近い時代が好きなので偏りはありますが、印象に残った作品の紹介や感想を書いていきたいと思います。

 

 

 

豊島康子 

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豊嶋康子《殺菌》(2006)
写真:柳葉大

引用元:TOKYO DIGITAL MUSEUM https://digitalmuseum.rekibun.or.jp/app/selected/mot-art

《殺菌》
ガラスケースの中にカラーフィルムが並べられ、ライトが当たったところが退色している作品。本来ガラスケースは内側の世界(作品)を守るが、この作品は外側の世界(鑑賞者)を守っている。


《パネル》シリーズ
額縁サイズの板が壁に対して斜めに立つよう設置されている。

作品はただの板のように見える。しかし裏側には模様が彫り込んであり、作品になっている。作品は表に表示されるという常識を覆す作品。

 これらのように当たり前を疑うという思考が具現化された作品でとても面白かったです。

 

 

岡本信治郎 

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岡本信治郎《銀ヤンマ(東京全図考)》

引用元:MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/multiple-perspectives3/

《銀ヤンマ(東京全図考)》
大きな銀ヤンマが高い高い空から東京の街を見下ろす爽快な構図・ポップなグリーンとオレンジの色使いで楽し気な印象を持つ一方、上部から流れ落ちた絵具が血や涙のようなどろどろとした気持ちを連想させる作品。
この銀ヤンマは爆撃機B29を意味しているそうです。

 

《積み木倒し・ニューゲルニカ
ピカソのような抽象画で謎の装置やインディアンなどのモチーフが散りばめられた絵。ところどころモチーフの名前が英語や日本語で書きこまれている。画面には火の粉を表す赤い点や病原菌を意味する紫の点が浮遊している。

ポップな色使いでコミカルな絵なのにどこか残虐さや毒を感じる作品です。

 

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岡本信治郎《ころがるさくら・東京大空襲》(2006) 
写真:大谷一郎 

引用元:TOKYO DIGITAL MUSEUM https://digitalmuseum.rekibun.or.jp/app/selected/mot-art
 

《ころがるさくら・東京大空襲
当時に屏風を作ったらこんな感じだろうな。と思いました。

文明開化や祝賀モードの中に小さなわだかまりが潜むような作品。
デパートや遊園地など、カラフルで華やかな画面の中に描かれる爆弾や火の粉が戦争という事実をあくまで淡々と描いているように感じました。

こんなに華やかで豊かな時代になったけど、愚かな戦争の過去は変わらないんだぞとつぶやくような。かといって戦争の悲壮感を強調するわけでもない。一見相反する概念が同居した面白い作品です。

 

 

草間彌生 

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草間彌生《死の海を行く》

引用元:MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/multiple-perspectives3/

《死の海を行く》
銀のボートが触手状の物体(男根状ともいわれている)で覆われている作品。草間彌生のソフト・スカルプチャの代表作です。

ここにあったのか!!
森美術館「STARS展」で大々的に草間作品展示している傍らでひっそりと名作が展示されていました!

同じくソフト・スカルプチュア作品の《ドレッシング・テーブル》もなかなかの迫力。

 

 

 

宮島達男

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宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》(1998)

1728個のデジタルカウンターがそれぞれのスピードでカウントと明滅を繰り返す作品。20年近くにわたってこの場所に展示されてきたそうです。

そうだ。ここにあったんだ。
なんとなく、どこかで見たのは覚えていて調べてみたら、5年前のMOTコレクションでした。当時はそんなことも知らず、ただ素敵だなあと思って見ていたなあ。美術館の改修が終わっても輝き続けるそれを見ているとなんだか感慨深い気持ちになりました。

 

 

 おわりに

とても充実した内容で大満足でした!
戦後から現代にかけて幅広い作品が網羅されており、絵画・立体作品ともに見事なラインナップでした。

戦後から現代へ流れていくような展示で、時代とともに美術が何を表現してきたかを知ることができます。

また、同じ時代の作品でも作家ごとに全く違う切り口で表現していて、それが見られるのはこの美術館ならではだな、と感じました。

一見の価値ありです!

MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ」は2020年9月27日まで開催。ぜひ足を運んでみてください。